ひび割れたアスファルトの上で足を止め、廃墟の病院仰ぎ見る。
「なあ、あの巫女少女は一体何だったんだ?」
まるで聞こえてないかの様に、瑠衣は門に向って歩き続ける。
「瑠衣!!」
駆け足で追い付き、再度同じ問い掛けをする。すると瑠衣は門の前で足を止め、鉄製の門扉にガンと蹴りを入れて振り返る。

「アレは、見上神社の娘。つまり、私の家の商売敵よ!!」
「商売敵?」
「ウチはこの地で500年以上続く由緒正しき神社、上代神社。ほとんど同じ時期にできたのが見上神社」
「へえ・・・」
「何よその顔?同じ娘でも、あっちはプロで私は素人だって言いたいの?」
「い、いや何も言ってないし・・・そもそも、何も考えてないし」
「くそ!!]
瑠衣のかかとが、足の甲に突き刺さる。
「ぐお!!・・・や、やり過ぎだろ」
「ふん。も帰る」
瑠衣はヒラリと門を越えると、目の前に停めてあった赤いまママチャリに乗って去って行った。

俺も門に飛び付くと、そのまま道路に着地した。
既に見えなくなった瑠衣の後ろ姿を思い出し、心の底から感謝する。アノ子のセリフではないが、もし瑠衣が来てくれなかったら間違いなく悪霊の仲間になっていた。いつかこの借りを返せれば良いが・・・