「その日から私は学校に行けなくなり、カーテンを閉め切った薄暗い部屋に閉じこもった。罪の意識から食欲は無くなり、体重は激減。自信を喪失して、誰にも会うことができなくなった」

瑠衣は震える手を握り締め、必死に言葉を紡ぐ。それはあたかも、十字架を前にした罪人の懺悔の様だった。

「そんな私を見かねた両親が、職業上のコネを利用し聖徳女学院に編入させたの。環境が変わり、少しずつあの事件の記憶が薄れて。元の生活に戻りつつあった。だけど・・・」
「俺に出会ったばかりに、忌まわしい事件現場に・・・ゴメン」

瑠衣は俺の予想に反し、その首を横に振った。
「前に進むためには、やっぱり過去と決別しなければならない。そこにあるモノは、あると認めなければ前に進めない・・・」
強い眼差しに、秘められた決意が滲む。


その時、左側にあった扉が音も無く開き、そこから伸びる細い手が瑠衣の手首を掴んだ!!

何が起きたのか理解できず、一瞬間が空く。その瞬きほどの僅かな時間で、瑠衣が扉の向こう側に引き摺り込まれた。俺は慌てて立ち上がると、瑠衣が消えた扉を勢い良く開け放った。