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「そこの女の子」

ちょうど校門を出ようとした時、真横から若い男性の声がした。自分に向けて投げ掛けられた言葉とは思わず、足を止めることもなく歩き続ける。

「おい女!!お前だよ!!」
険しい口調に変わり、驚いて声の主を確認する。すると、門柱の陰に学生服姿の男性が立っていた。

髪を金髪に染め、ハリネズミのように立たせている。両耳にリング状のピアス。この制服は隣町にある二葉中学校のものだ。ここ数年、かなり荒れているという噂が流れている。

「服部君知ってるよね?」
「服部君・・・ですか?」
服部という名前の生徒を、一生懸命頭の中に思い浮かべる。同じ学年に1人いるが、多分違う。

「3年生の服部君ね。悪いんだけどさ、ちょっと伝言頼まれてくれないかなあ」
やっぱり、あの服部君か。

この中学校で一番有名な生徒。見た目は普通だが、駅前とかでいつもケンカをしていたりする。それが原因なのか、時々強面の人達が学校に乗り込んでくることがある。

私は金髪の人に、ほとんど強制的に伝言を託された。嫌な役目ではあるが、多分顔を覚えられた。伝えない訳にはいきそうにない。