「え・・・あ、いや、分かれば良いのよ」
素直に頭を下げた事が予想外だったのか、瑠衣は照れた様にそっぽを向く。

とりあえず、早くこの場所を離れなければならない。
「イテテ・・・」
立ち上がろうとすると、右の脇腹に激痛が走る。肋骨が何本かいってるようだ。
「大丈夫?」
「ん・・・さっきのパンチよりは痛くないよ」
俺の返事に瑠衣の頬が膨らむ。
「チッ、助けなきゃ良かった」
「ハハッ」

「で、コイツは一体何だったんだ?」
残骸を指差し瑠衣に問い掛ける。
「うーん・・・何て説明すれば良いのか難しいところだけど、ゾンビの一種かなあ」
「ゾンビ?」
「でも、不死者とかではなくて、強力な悪霊に魂を操られているって感じかな」
「へえ・・・」

緊張感が無い相槌を打った後、その言葉の意味にに気付いた。強力な悪霊に操られていたって事は、ここにそれが棲んでいるといういう事ではないのか?

表情の変化から読み取ったのか、瑠衣が自分から口を開く。
「ここには、絶対に触れてはいけないモノが・・・私が知る限りでは最悪の悪霊が棲んでる。
そして、私はその悪霊の正体を知ってる」
「は?」

「私は、悪霊が誰なのか知ってる──」