もう一度念入りに周囲を見回し、無意識に止めていた息を大きく吐き出す。気が付くと、全身が冷たい汗でジットリと濡れていた。

 霊は深夜だけではなく、昼間もそこにいる。
 そこにいて、俺達を見ている。

 慌てて、お気に入りから心霊スポット一覧を選択する。確か、八幡橋交差点は・・・

「少女が自宅までついてきて、呪い殺される、か」

 能力がある人が見れば、俺の背中には少女が乗っかっているかも知れない。想像するだけで、真夏だというのに背筋がゾクゾクと寒くなる。

 目を閉じて深呼吸をし、拳を握り締める。
 いや、願ったり、叶ったりだ。
 俺は悪霊を成仏させなければならない。自宅に来るのならば、その時に送ってやるさ。

 しかし、どうすれば成仏させる事ができるのだろうか?それがまだ分かっていない。

 俺は交差点を離れ、ひとまず帰宅することにした。少女の姿が消えた今、ここにいても仕方がない。

 自転車を起こす手が小刻みに震える。
 正直、存在を確認した今、悪霊が怖い。
 対処の方法が分からないことが、何よりも恐ろしい。

 それでも俺は―――