実は、彼女はご主人様でした。

桜雪は丁寧に御断りをしていると言っていた。真人は桜雪がその為に指示していることを悟った。


答えが分かっている分、焦らされている事が重苦しい。今ここで無理だと言ってくれた方がまだ精神的に逃げることができるのに。


更に溜め息が増えた真人は、とりあえず授業に参加する形で時間を過ごした。


 
そして放課後。



いつもなら数人は話すことに夢中で、すぐに教室が静かになることはないが、今日は皆何があったのか、意外にも教室内はすぐに静かになり、ふと気付けば真人と桜雪の二人だけとなっていた。


都合のいいようには物事は進まない。


拷問と思えるような時間を乗り越え、そして再び試練はやってくる。自分の覚悟とは裏腹に物事は進んでいる。


真人は、本日何度目か分からない溜め息を漏らした。



「今日は溜め息をする場面ばかり見てる気がする」

「……はぁ。誰のせいだと…」

「え…?もしかして私のせいなの?」

「状況から見て、美倉さん以外に誰がいるのか俺には分からないな」

「そっか。それは、ごめん」



あっさりとした断り方に真人は呆気に取られた。