真人は桜雪を見つめる。
真剣な眼差しを受け、桜雪は顔を背けた。
すっかりと暗くなった教室の中、二人の間に沈黙が流れる。



「とにかく!」



真人からの発言を抑えるために、桜雪は顔を背けたまま声を荒げた。
必死な様子に、真人は発言を控える。



「両親の負の感情を貰う時が来た。それには真人にも協力してもらいたい。駄目か?」

「いや、全然大丈夫だよ」

「ありがとう、よかった。来週の日曜日に我が家に来てもらっても大丈夫だろうか?」

「構わないよ、分かった。来週の日曜日ね」



来週の日曜日、真人は今の桜雪と最後の日となる予定を入れた。

それまでの時間は、何事もなくいつもと同じように流れていく。

今まで普通に過ごしてきた分、予定の日までに何か思い出になることをすればよかったのかもしれないが、恋愛スキルが少ない真人には、いざと言う時の行動力がなかった。

桜雪もまた普通で、何か行動を起こすこともなく、何の動きも見せない真人に対して文句を言うこともなかった。

そんなごく普通の時間が過ぎていき、特別な思い出を作ることもなく予定の日曜日を迎えた。

寝坊することなく朝を迎えることができた真人は、待ち合わせ時間に間に合うように身支度を整える。

そして、桜雪の自宅前で待っていた桜雪もまた、髪を軽く束ね、前回と同様のラフな格好で真人を迎えた。