実は、彼女はご主人様でした。

考えたくないこと、と言うことは、今男子生徒の目の前にいる真人そのものが毒となっていることか。

 
溜め息をつくが、どうしようにも、これが男子生徒の見た既視感だから変えようがない。



「じゃ、俺どうしたらいいの?このままここにいても、男子生徒にとっては邪魔な存在ってことだよね」

「いや、そのままでいい」

「は?いや、このままじゃ男子生徒の心が黒く染まっちゃうんじゃ…」

「それでいいんだ」

「え…?」

「私は、その黒い部分が欲しいのだ」



そう言うと、桜雪は発狂している男子生徒の側に行くと、自然な笑顔で男子生徒の眉間に人差し指と親指でつまむ形を取ると、一気に自分の方へと引いた。


何かをつまむような仕草をしていたが、それが何なのか分からなかった真人は息を呑み黙ってみていると、桜雪の指先に黒いものがついて行っている。



「え、何…それ…」

「あ、これか?」



黒いものを見せると、それを口に持っていき、美味しそうに頬張った。


ずるん、と言う効果音が似合いそうな物体は、綺麗に桜雪の中に吸収されていく。


食べ終えた桜雪は、隣にいた呆然としている男子生徒にも同じような仕草をすると、先ほどよりは小さいが同じような黒いものを呑みこんだ。


途端に力尽きるように男子生徒は教室内に倒れ込み、意識を失った。



そして世界は元に戻る。