「ちょっと人が多いか」

「は?」

「隣も物音が聞こえるな」



生徒が残っている教室をのぞき込み、文句を言っては隣へ足を運ぶ。真人は黙って桜雪の行動を見ているしかなかった。



「お、ここならよいかもしれぬな」

「ここ?」



桜雪が選んだ教室は、男子生徒が二人程残っていた、物音がする程度の静かな場所。


笑顔の桜雪は、そのままの表情を保ち教室に入った。


途端に視線が桜雪に移る。


真人は桜雪の後ろにいたが、男子生徒の瞳には真人の姿は映っていないようだった。



「こんにちは」



花のような笑顔に、男子生徒は戸惑いながらも会釈で返した。



「真人、こっちに」



華麗なエスコートで呼ばれ、華やかで嬉しそうな雰囲気を出している男子生徒に注目を浴びる形で真人は姿を現した。


途端に怪訝な顔になる男子生徒。