実は、彼女はご主人様でした。

何故だろう、仕方ない、と思う自分がいる。


真人は、自分自身に呆れているはずなのに、今の状況を呑みこもうとしている自分に驚いた。



「そうだな、せっかく恋人同士になったんだ。お互いの呼び名を決めよう」

「呼び名…美倉さんじゃなくて、桜雪とか?」

「そうだ。私のことは桜雪でいい。お前は…そうだな…太…」

「太郎はやめて。今違うから」

「そ、そうか…。じゃ…名前でいいか?真人…」



先程までとは違う桜雪の雰囲気。

戸惑いながら言う真人の名前に、本人である真人は不思議に想い桜雪の顔を覗き込んだ。



「……顔、赤いけど。大丈夫?」



桜雪の顔は赤く染まり、熱を帯びていた。


思ってもみない出来事に、真人は不敵な笑みを浮かべる。