実は、彼女はご主人様でした。

「え…?」

「先ほど言っただろう、襲われていたと…私の血肉を狙う人々によって私は殺された。そして、その者たちによって私の血は抜き取られ、肉体は削ぎ取られていく。最終的に私は完全な躯となった。そんな私の隣を離れずに太郎はずっと座っていた」



既視感で見た光景を思い出し、そして桜雪の言う通りに想像してみた。


どことなく寂しい気持ちが真人の内を巡る。


その感覚を知っているかのようだった。



「もしかして、太郎…俺は…そのまま?」

「あぁ。お前もまた、木々の栄養となった。私は肉体が滅びても、ずっとお前の側にいた。だから、お前が私と同じように魂だけの姿となった時に、すぐに再開することができた」



思い出話をしている桜雪の表情は穏やかで、思わず見とれてしまうほどの笑顔を浮かべていた。


けれど、どんなに懐かしそうに桜雪が前世の話をしても、感覚で多少の懐かしさを感じる以外に、真人にはそれ以上のことは分からない。