実は、彼女はご主人様でした。

「そうそう。そんな感じ」

「そうか…はぁ…」

「何で溜め息?」

「いや、慣れないことをすると心が落ち着かないな、と思ってな…」

「落ち着かない、ねぇ」

「何だ?」

「まったく…そういう素直なところ、本当に俺、好きだよ」

「え…っ!!」



真人の唇が桜雪の柔らかい唇に重なる。
触れた瞬間は冷たく、触れ合うと同時に熱くなる。
そしてゆっくりと唇は離された。



「知ってる?これ、キスって言うんだ」

「キ、キキキキキス!?」

「これも恋人同士の特権!どう?ドキドキする?」

「あ、あわわわわ」



これ以上顔が赤くなることはないが、心の動揺は止まらない。

激しくなる鼓動に、桜雪はその場に座り込んだ。

その様子を真人は笑顔で見ている。



「大丈夫ですか?ご主人様」



見上げた桜雪の瞳に映ったのは、満面の笑みを浮かべる真人の姿。

差し出された真人の手を取り、桜雪は力の入らない足を何とか立たせた。



「こ、こんなときだけ…ご主人様と言うなぁ!」

「申し訳ございません、ご主人様」

「また!」

怒りの声を上げながらも、真人の笑顔につられ、桜雪は笑っていた。