実は、彼女はご主人様でした。

“好きだ”という言葉に慣れたのか、最近では普通にこの言葉を口に出す。顔を赤くして背けていた桜雪を見ることは珍しいこととなっていた。

あまりにも普通過ぎる反応に、真人自身も言葉に慣れ、無言で返すようになっていた。



「何だ、好きじゃないのか?」

「…いや、好きだけどさ…」

「何だ」

「桜雪さ、両親の離婚が済んでから誰の前でもそのままになったなぁ、と思ってさ」

「ん?どういう意味だ?」

「口調も戻らないし、告白されて、あんなに丁寧に御断りをしていて、しかもそれをモットーだと言っていたのに、今じゃ“すまない。付き合うことは出来ない。なぜなら、私は真人のことが好きだからだ!”とその場で返しちゃうし…」

「え?何だ、それはダメなのか?」

「いや、駄目じゃないし、そう言ってもらえるのは嬉しい気持ちはあるんだけど…こう、何と言うか…恥じらいがないって言うのかな…」

「恥じらい?気持ちをはっきりと言うことに恥じらいがいるのか…そうか…知らなかった…」

「え、いる…と言うよりないの?意識して出るものじゃないと思うんだけど…」

「ないな」

「そ、そう。分かった。これ以上のことは言わないことにするよ」

「そうか?分かった」



真人は小さく溜め息を漏らす。