実は、彼女はご主人様でした。

「桜雪はどちらに着いていきたい?」



母親が問いかけるが、母親の視線は定まっていない。
 
母親の本当の想いを桜雪は悟った。
母親は面倒なことから逃げるタイプだ。だが、悟った上で、桜雪は答えを出した。



「私は母親に着いて行きたい」

「え…」



 困った表情を浮かべ、戸惑いの返事をした母親を桜雪は静かに見ていた。



「大丈夫。お母さん、一緒に生きて行こう」



煮え切らない返事をそのままに、桜雪は母親と共に過ごすことを決めた。


母親の両親は既に亡くなっており、身寄りは誰もいなかった。


だからかもしれないが、高校を変わることもなく、駅近くの便利がいい所にアパートを借り2人で暮らしている。


父親は別れた後すぐに別の女性と籍を入れ、あの家で暮らしている。


母親は父親と別れた後に職を見つけ、今はその仕事を覚えることで精一杯で、桜雪と会話をする精神的余裕がない現状だ。