実は、彼女はご主人様でした。

「どこか行くのか?」

「忘れたのか?両親から負の感情を抜き取ったのを。私たちの目が覚めたと言うことは、両親の目もとっくに覚めているはずだ」

「あ、そうか…」



階段へ通じる廊下に、扉が開く音が響く。

暗闇の中、電気を付けることなく桜雪は階段を下りて行った。その後を真人も追う。
一階へ近づくにつれ、暗い廊下が明るくなっていっているのが分かった。


リビングの電気が着いている。


両親の目は覚めていた。

そして、いつもと変わらない普通通りの生活が始まっている。

照明が煌々と輝いているリビングの扉を開くと、そこには笑顔でテレビを見ている父親の姿と、キッチンで鼻歌を歌いながら料理を作っている母親の姿がそこにあった。


何事もなかったかのような雰囲気の中、桜雪は無表情で入って行く。



「お父さん、お母さん…」



桜雪の声に、父親は真面目な顔をしてテレビを消し、鼻歌を止めた母親は手を止め、父親の隣に移動した。

どうしたらいいのか分からずに真人は扉付近で立ち往生している。

そのまま会話は始まった。