実は、彼女はご主人様でした。

桜雪は真人とのことを思い出した。

確かに鼓動が早く、そして締め付けられる痛みに襲われ、顔に火照りを感じ体全体が熱くなることがあった。そんな状況を真人に知られるのが恥ずかしくて、目を合わせることもできなかった。


このことを言っているのか確信はないが、桜雪にはこれしか思い当たることはなかった。



「思い当たることがあるみたいですね。きっと、そのことです」

「え、あの何とも言えない胸の痛みもか…?」

「そうそう、それも含まれます」

「でもそれが何だと言うのだ」

「…え…あ…そっか…初体験だったんですね…」

「何がだ?」

「それがね、恋、というものなんです」

「………こ、い…恋っ!?」

「そう。あなたはね、藤井君に恋をしているの」

「太郎に、私が…信じられん…」

「太郎って…昔の話じゃないですか。今はあなたと同じ人間です。言葉を交わすこともできる、そして、手を繋ぐこともできる」

「………」

「そう感じたからこそ、あなたは藤井君に魅かれたんでしょう?」

「魅かれた…」

「…そうだな…じゃ、あなたが私の体の中にいるとして、私が藤井君と仲良くしていることを想像することができますか?」

「それは…想像も何も…本来の…姿だから…」