実は、彼女はご主人様でした。

「私はあなたを通して現実の世界を知ることができる。教えてよ、色んな事」

「いや、それは桜雪でも…」

「私ね、思うんです。これを含めた様々な事があなたへの試練なんじゃないかって。だから、きっと、あなたが私と一つになって人として生きていくことが答えなんだと思います。それに、あなたは私の願いを叶えているんです。私はもう充分です」



願い。


両親を殺さないこと以外に何かお願いをされたのか、桜雪は思い返すが検討がつかない。
何かを言われた覚えはないが、桜雪が体を借りている間に、自然と願いは叶っていたと言う。


桜雪は抱きしめられたまま首を傾げた。


その行動に本来の桜雪は気付くと、小さく笑った。



「何のことか分からないみたいですね」

「全く分からない…」

「ふふ。私ね、彼氏がいたことがないんです」

「………え…」

「私のことを思って告白を御断りしていたみたいですけど、一人だけ、断らずに付き合うことにした人がいるでしょ?」

「……真人のことか…」

「そう。藤井君。私、藤井君に会いました。けど、私…彼氏だと分かっていても彼のことを名前で呼ぶことは出来ませんでした。今体を動かしている存在は普通に呼んでいましたけど…。やっぱり私には無理だった。好きだと言う気持ちが全然分からないんです。でも、あなたが私の体を動かしていた時には感じたの。あぁ、これが…って…」

「………え…?」

「はは…やっぱり分かりませんか…。藤井君と一緒にいるときにドキドキしたことがあったでしょう?」

「え…ドキドキ…」