実は、彼女はご主人様でした。

「何かいる?」

「はい。藤井君の知っている桜雪です。藤井君はそこで待っていてもらえますか?ここから先は私が行きます」

「あ、あぁ…分かった」

「では」



軽く会釈をすると、本来の桜雪は真人の知っている桜雪の元へ静かに歩み寄った。
小さく座り、顔を伏せていた桜雪は近づく人影に気付き、ゆっくりと顔を上げ、その人物を確かめる。


同じ顔をした者同士が互いに向き合う。


性格は全く違うが、持つ魂は変わらない。ただ、一部が欠落し、その一部を受け持っているだけ。


暗闇の中、よく目立つ二人の存在を真人は遠くから見守る。

そしてついに、本来の桜雪が口を開いた。



「私はもう、現実の世界に戻ることはしたくないです」

「……でも…」

「いいんです。あなたが、これからの時間を過ごしていってもらえますか?」

「いや…私は本来なら転生できない身だ。それは出来ない…」

「私は、あなたの魂の一部を持っているんですよ?」

「それはそうだが、その魂の一部を持った桜雪が本当の桜雪だ。私は魂の一部を失った悪霊にしかすぎん。体を借りている悪霊。本当の桜雪ではない」

「いいえ、私はそうは思いません。あなたの魂の一部を持って産まれ、あなたはその魂の一部を失った。それなら、私はあなたでもあることは違いないと思います。完全な魂を受け継いでいませんが、私はあなたです。なので、この体をあなたが使ったとしても何も悪いことではありません」

「でも…」

「私はいいんです。きっと、今私の体を動かしている存在も異論はないと思います」

「………私は…」