実は、彼女はご主人様でした。

過去の出来事は過去の出来事。

この映像は桜雪にとってはただの場面でしかなかった。

これからも同じ時間を過ごさなければならないかもしれない、そんな不安を抱えながら過ごす毎日の時間よりも、過去の場面を見ることは容易いことだった。

 
冷めてる、そう思う人もいるかもしれない。
けれど、桜雪はそんな毎日を過ごしてきた。何事もなく普通に過ごしてきた真人にとって、それは想像を超えた日常としか思えない。


そう思うと、真人の心の奥底が締め付けられるように痛みが走った。



「……そっか…」



これ以上の返事をすることができない。
言葉が思い浮かばないというのが本音だ。


それから真人は言葉を発することなく、桜雪の進む速度に合わせ、心の奥底へと進んでいった。



「もう少しです」



様々な場面を通り過ぎ、ついには何も映像のない暗闇の空間にたどり着いた。

これが心の奥底かと思える程の何もない、ただ黒一色の世界。

その真ん中に何かがいる。

真人は目を凝らし、暗闇に映える小さなモノを見つめた。