実は、彼女はご主人様でした。

 魂が抜ければ、体は動かないままの人形のようなもの。予想は出来るけれど、その状態になることを思うと、ほんの少しだけど怖い気もする。



「大丈夫ですよ、死ぬわけではありませんから。藤井君の体の側には私もいますし」

「あ、あぁ…そう言えばそうだったね」



死ぬわけではないという言葉を聞き、躊躇した気持ちが前向きに変わる。
本当に大丈夫か、と言う気持ちがあることは心に仕舞い、真人は差し出された桜雪の手を取り、共に動き出した。


桜雪の体の中に入った瞬間、走馬灯のように流れる映像。


その映像は桜雪が見て来た世界。


青空を見ていても全然清々しく思えない。

大きなグランドを走っている生徒達の頑張っている姿、下校している生徒達の笑顔や話し声、どれを見て聞いたとしても、一つも共感できることはなく、何も思わない自分がいる。


桜雪の一面だ。


足を進めれば進めるほど、映像に映る桜雪の表情は暗くなっていっている。

映像を見れば、また心が痛むかもしれないと真人は桜雪を心配したが、桜雪は平然とその映像を流し、歩いていた。



「これ、君の…だよね?」



既視感ではなく、本来の桜雪が体験した映像。



「はい」



即答で本来の桜雪は答えた。