実は、彼女はご主人様でした。

恋人、としては考えてはいなかったが…。


それから二人で共に時間を過ごし、力を蓄え、真人は本来の桜雪の存在を知る。

当然両親のことも知るようになり、ついに両親の負の感情を抜き取ることに成功した。


犬と飼い主として共にいたのに、今は人間として共にいる。

何も言わずとも存在だけで嬉しかった日々が、今では普通に会話をして、その会話に反応する自分がいる。

胸が締め付けられ、鼓動が速くなる、あの体の不調は何だったのか。
理由は分からないまま桜雪はその時を迎える。



真人は桜雪と本来の桜雪との一部始終を映像で見ていた。

既視感を呼び出すことのできる力と都合よく変えることのできる力。

これは桜雪の既視感を見たあの映像を都合のいいように変えた真実の映像。
桜雪の出来事と心に秘めた想いだった。

 
悪霊となり、人間を殺したことが確かだとしても、桜雪は常に自分ではなく人を思っていた。
きっとだからこそ、桜の木という縛り付けが無くなった時、負の感情の一部がなくなったのではないだろうか。


本来の姿を取り戻すために。

そして、その因果を消すために。

きっとその試練として桜雪の魂の一部を持った人間が産まれた。


これを乗り越えることができれば、桜雪は自分で未来を切り開く人生を手に入れることができる。

良くも悪くも自分次第でどちらにも転ぶ。


けれど、これは神様からのご褒美だとも言えるはずだ。