実は、彼女はご主人様でした。

太郎を見守り続けることで世界を見ることをしなかった桜雪は、そこで初めて太郎が産まれる世界のことを知ろうと思った。


そこはかつて桜雪が生きていた頃の世界とは違い、身に纏う物も違えば、建物も違う。つまり文化が違っていた。


時代は変わっている。


一体どれだけ周りを見ずに時を過ごしてきたのか、桜雪は環境の変化にも気付かなかった自分自身に呆れながら笑う。

我に返り、初めて自分を思った時に、自分自身の中にあるものが軽いことに気付いた。


人間を想い、復讐の鬼と化した心の一部が欠落している。

何をしても消えないと思っていたもの。

自分に起こった事を、どんなに思い出そうとしても、あの出来事は過去の事となろうとしている。

この身、この状態のまま彷徨い続けるはずなのに、なぜ心の一部が欠落しているのか。


桜雪は不審に思い、無くした心の一部を探し続けた。


そんな時に太郎は再び人間として生まれ変わる。それが今の太郎、真人だった。


もちろん真人を見守り続けることは今までと同じ。


桜の木が枯れることで自由を手に入れた桜雪は、真人を探し出すと、常に側に寄り添い、悪いことが起こらぬようにと守護していた。


同時に心の一部を探してはいたが、真人の側を離れることができずに十数年の時が経つ。


そしてついに、桜雪は心の一部を持った女の子を見つけた。


やはり縁があるのだろうか、その子も真人のいる学校に入学していた。