実は、彼女はご主人様でした。

けれど、桜雪が遂げた復讐は消えることはない。

生きていた頃と同じ表情を見せていても、桜雪の魂は悪霊のまま。

それは桜雪自身も分かっている。

分かっている上で、太郎との時間を過ごしていた。

躯はついに土に返り、桜雪と太郎はその場から動くことができなくなった。桜の木に縛り付けれたように、桜雪と太郎はその場所で長い時を穏やかに過ごしていった。
 

だが、その時間にも終わりが来る。


それは当然のことだった。


太郎は人を殺したわけではない。

ここに留まることを選択したために桜の木に縛り付けられているが、悪霊ではない。

太郎は転生の時を迎えていた。

景色に溶け込むように太郎は魂が薄くなっていく。桜雪は消えていく太郎を想い涙した。


寂しい気持ちはある。
けれど、その気持ちを表に出してはいけない。


そう桜雪は思っていた。

桜雪は悪霊の身。これから先、桜雪が転生を迎えることはないことは自覚している。この姿のまま消えることもできず、誰にも存在を知られることもなく、この場所でずっと時を過ごすことになることも分かっている。穏やかに思えても自由ではない現状に、転生の可能性を持っている太郎を道連れには出来ない。


桜雪は自由な世界に行く太郎を本当に嬉しく思った。
これで太郎は本当に自由になる。


幸せになって欲しい。