実は、彼女はご主人様でした。

確かに強引なところもある。

けれど、桜雪はいつも人のことを思っていた。

特に大切だと思う相手は自分を犠牲にしても守ろうとしている。
本当は優しさを誰よりも知っている。

そう気付いたとしても、真人は真人の知っている桜雪に伝えることはできない。



「俺の知っている桜雪はもういないの?」

「………」

「何で黙るの?」

「いや…ふふふ…」

「え…次は笑うの?」



目の前にいる桜雪が違うことは会話をする前に聞いている。

だけど本来の桜雪も今はまだ出てきていない。
なら、少しの希望を持ってもいいのではないだろうか。

そう思ってはいるが、目の前にいる桜雪は笑っている。

おかしいことを言ったつもりは微塵もない。なのに、なぜ笑われているのか。



「真人は正直ね。これはぜひ、彼女にも正直になってほしいものだわ」

「?」



真人の目が桜雪の掌で覆われる。思わず心臓に激しい衝撃が走った。