実は、彼女はご主人様でした。

確か太郎と過ごした年月は50年と言っていた。
 

魂だけの姿になっても太郎は桜雪と桜の木の下で過ごしていた。

誰にも邪魔されることのない時間。

いつ訪れるか分からない別れに寂しさを感じながらも、太郎と桜雪は生きていた時には味わえなかったゆっくりとした時間をどう思いながら過ごしたのだろう。



「俺が先に消えたと言うこと?」

「消えた…まぁ、そうね。正確に言うなら、転生の時を迎えたのよ」

「えっ…転生?俺がっ?」

「そう。桜雪の前から完全に消える瞬間まで太郎は桜雪から目を離さなかったわ」

「今の俺なら転生を拒みそうだけど…太郎はそうしなかったのか…」

「違うわ。拒めなかったのよ」

「拒めなかった?」

「そう。誰にでもいつかは転生する時が来ると思っている。けれど、桜雪はそれが叶わなかった。そして、太郎もそれを知っていたの」

「叶わなかったって……あ…」