実は、彼女はご主人様でした。

太郎は怪我をしても桜雪を守りたかった。なのに、桜雪の体は冷たくなっていった。



「俺、嫌だな。守られたとしても切なすぎて辛すぎる…」

「そうね。けど、逆だとしても同じことを桜雪は思ったと思うわ」

「あの桜雪が…?」

「思うわよ。桜雪だって人間よ。あの環境下じゃ寂しさを感じていても不思議じゃないじゃない」

「あ…そっか。確かに…」

「皆が気味悪いと存在自体を遠ざけ、親はそれを利用しようとする。なのに、太郎だけは側を離れず、ただそっと隣にいてくれた。太郎は桜雪の何かを見ていたのかもしれないね。家族で仲良くしている姿とか、笑顔で人と接しているビジョンとか…」

「つまり似たもの同士だったってことか…」

「何?嫌なの?」

「いえ、全然。太郎も人間だったらなぁ…なんて思ったりしました」

「安心しなさい。今は人間でしょ」

「まぁ、確かに」

「怪我を負ったまま、太郎は動かなくなった桜雪の側に寄り添っていたの。冷たいあなたを温めようとしてたのね。けど、太郎にも体の限界が来る。ついに冷たくなった体は木々の栄養となっていった。そうして二人は魂だけの姿のまま過ごしていたのよ。だけどね…」