実は、彼女はご主人様でした。

この細い体の中に、一体何人もの桜雪がいるのか。

真人はややこしいと分かっていながらも、目の前にある問題に目を背けてはいけない気がした。



「藤井君…いえ、真人…と呼んだ方がいいのかしら?」

「…どちらでも…好きな方で…」

「そう?じゃぁ、馴染みのある真人と呼ばせてもらうわ。真人」



馴染みのある声で呼ばれる名前は心臓に悪い。
無表情を装いながらも真人の心は反応をしていた。



「…はい。なんでしょう」

「桜雪はなぜ人の負の感情を取るようになったのか分かる?」



真人の思考が止まった。

確かに何故と聞かれても考えたこともなかった。力を蓄えるためだと聞いていたことを鵜呑みに、疑問に思うこともしなかった。


前世で負の感情を吸収すると言うことは聞いたことがない。なのに、なぜ、現在において吸収しなければならないのか。その疑問は桜雪からの質問によって初めて頭を過ぎった。