実は、彼女はご主人様でした。

「いやいや、御断りは配慮してるんじゃないの?」

「え?あぁ、このごめんは違うよ。何だか私のせいで溜め息が出ているみたいだから、ごめん、って意味だよ」

「あぁ、なんだ。そっか」



覚悟を決めているようで、心は敏感に反応している。


言葉の流れからすれば、告白に対する言葉じゃないことは分かるはずなのに、謝罪の言葉に敏感になっている自分がいる。


真人は俯き加減で桜雪と向き合った。



「藤井君、もう一回言ってくれないかな」

「…何を?」

「授業中に言ってくれた言葉」

「え…」



そこまで忠実に再現しなくてはいけないのか。

これが桜雪のこだわっている断りの仕方か。

真人は返事を聞くために桜雪の要求を呑むことにした。



「分かった…」