「っぶねー」



え?



男子の声?



なんかすぐ後ろから聞こえるような…。



それより、あたし助けてもらったの?



そういえば、お腹のあたりに男子の筋ばった腕がある。



こんなの空想でしかありえないと思ってた。



けど、本当にこういうことってあるんだぁ。



って、感心してる場合じゃなくて!



お礼言わなくちゃっ。



「あ、あの…ありがとっ…」



そこまで言いかけて、あたしの思考が一瞬止まった。



…。



どうしよう。



お礼を言うために、後ろを振り向いてその男子の顔を見たら…。



なんと、あたしと同じクラスのヤンキー、しかもトップの水沢 圭斗(ミズサワ ケイト)くんだった。



顔が青ざめていく。



「え、えと…あの…」



ひ〜ん。



目つき悪すぎだし、怖いし…。



うまく言葉が出てこないよー!



「うっ、うう…ごめんなさいー!!」



もう、それしか言えなかった。



がんばって言えることだけ言って、水沢くんの腕からすり抜けた。



下に落ちた本を今までに無いくらいのスピードで拾い集める。



よし、これで全部だよね!



早く逃げよう!



自分でもビックリするくらいのスピードで、その場から走り去った。



こ、ここ怖かったよ〜!