「あーっ、パットさーん!扉閉めるのちょっとだけ待ってくださーい」







パットを呼ぶ女の人の声が、どこかから聞こえて。
扉に向かって、走ってくる女の人がいた。




その女の人には、見覚えがあった。






「あぁっ!」





「あっ!あなたは王子と一緒だった……」





私を見た女の人はビックリしていた。
走ってきた女の人は、さっきエルノと通りかかったカフェで会った、エプロン姿のお姉さんだった。






最初に出会った時と同じ、エプロン姿だった。




…このお姉さんも、エルノの悪口を言っているのをさっき見かけた。
こちらに向かってニコニコしているけど、心なしか警戒してしまう。






パットは気にしてないみたいで、カフェのお姉さんに普通に話しかけてる。






「おぅ、ケイス。もうそんな時間になったか?」






「えぇ。すぐ済ませますから。」






お姉さんは、私と同じように扉の外へと出てきた。
塀の外に立っている私を見て、お姉さんはビックリしたみたい。





「え…っと、あなた、どうして国の外に出てしまっているの…?外に出てはいけないのよ?」






「あ、いえ。私、この国の者ではないので…」






私の返事に、眉をひそめた。
お姉さんは、明らかに「信じられない…」という顔をしている。




そして、本当か確かめるようにパットを見た。頷くパットを見て、私の言葉を初めて信じたいみたいだった。





でも、お姉さんは心配そうな顔をしていた。





「そう…。だったら早くこの辺りからは去った方が良いわ。」





「えっ…?何でですか?」