『ここ数年…この国は国民の心が荒んできた……目に見えて分かるほどに。』
『だけど…僕はこの国に何もしてあげられない。策を打つことも出来ないまま、毎日を繰り返すだけ…。
お城に住みながら何の権力もない、ただの王子。
それを、国民も知っている。』
そう、大広間で言っていた。
影では、自分のことを悪く言っていることを知っている。
だけど知らないフリをして、笑っている。
そして、まだ国民のためにできる何かを諦めていない。
だからこそ……「この国を愛している、王位を継承したい」と…あんなに言っていたんだろう。
やっと、彼のことが分かってきた。
だけど彼の気持ちは、国民に全く伝わっていないみたい。
それはきっと、魔法や永遠の命という長い時間のせい。
前の国王がいなくなり50年。
魔法で「ある程度」の便利さが約束され、永遠の命で得られる長い時間。
何一つ変わらない状態に、慣れて、諦めてしまったんだろう。
それが、この国の国民の心が荒んでいった理由なんじゃないかな…。
なんて、寂しくて、悲しいんだろう……。
……エルノは、寂しくないんだろうか…?信じられる人が、いるんだろうか……
そう、思ってしまった。



