エルノはすごく困った顔をして笑った。
「ごめんね。僕は、この国を出ることが出来ないんだ。」
この国を出るって言っても、森はすぐ近くなのに…。
「近くの森なのに…ダメなの?」
エルノは「うん」とだけ言ってうなずいた。
「この国には、塀があるだろう?誰であろうと、あの塀の向こうには出られないんだ。」
「……王子の権力でも?」
エルノは横に首を振るだけで、頑なに塀の外に出ることを良しとは言わなかった。
きっと、そういう決まりでもあるのだろうと思っていたら、やっぱり決まりがあるらしい。
…だとしたら、塀の外には出れないエルノと。
塀の中には入れないマグノア。
これもまた、この国の決まりが変わらない限り、会うことのできない二人なんだろう。
「この国のニンゲンとオオカミは、あまり折り合いが良くなくてね。争いが起こる前に、交流を禁止されているんだ。」
「そうなの!?」
私を食べようとしていた狼は置いといて、少なくともマグノアは好戦的なタイプには見えない。
「まぁ……色々あったんだよ。」
何だか触れてほしくなさそうな話題みたい。
「たんぽぽは、マグノアに会いたいんだよね?」
「え?う、うん。」
「だったら…国の中ではそれは言わないでね。多分、捕まっちゃうよ。」
捕まる?………何に!?
そう思って聞いてみたけど。
エルノはそれ以上何も言ってくれなかった。



