現状の手だてはない、か。
……何かないのかな…でもそんな、魔法みたいなこと……
ん?魔法??
「あぁあっ!!!」
突然のひらめきに、大声を出した私にエルノはビックリしてる。
「え…?な、なに…?」
「分かった!魔法だよ!」
「魔法?」
エルノはポカンとしている。
「魔法で春がくるようにしちゃえば良いんだよ!」
「あぁ…それはできないんだよ。」
エルノは、「何だ、そんなことか…」って顔してる。
…ひどいな。
せっかくの案をソッコー否定されて、ちょっと腹立つ。
「何でよ!?」
「確かに、この世界には魔法があるよ。」
エルノは左手の人差し指を、スッ…と伸ばした。
そのまま、大広間の真ん中にある長テーブルに沿って、置いてあるイスの一つを指差す。
クイッ、とエルノが人差し指をこちら側に動かす。
するとイスがカタッ…と音を立てながら動いて、人が座れる程度のスペースを、テーブルとの間に作った。
……初めて魔法を見た。
私が思ってた規模よりも可愛いものだったけど。
本当は、もっと派手な魔法を期待してたけど……
この世界で使える魔法の規模もまだよく分からない。
「今、つまんねーって思った?」
エルノがジトッと私を見てくる。
的確なツッコミに、声に出してしまっていたかと心配した。
「いいいいや!!そんなことは!!素晴らしかったです!!!!」
そう褒めてみたものの、エルノは嬉しそうではなかった。



