「王子、その方は?」




お姉さんは、私を完全に怪しんでる。
王子は、微笑んだままで私のことを紹介してくれた。





「あぁ、彼女はたんぽぽ。僕の……お客様だよ。」





「そうなんですか?初めて見た方だから怪しい方かと思ってしまいました」





ふふっ!とお姉さんは笑った。





……理解はしてもらえたみたいだけど、何で初めて見る…が怪しいにイコールするんだろう?





二人の様子を見ていたら、エルノにグイッと手を引かれた。
先を進むつもりらしい。





「じゃあ、またお茶をいただきに来るよ」





「待ってますねー、王子ー」





その後もお店の前を通る度に、国の人からエルノは話しかけられ続けていた。
エルノは笑顔でやんわりと会話を避けつつ、挨拶だけを交わしながら進む。





皆エルノと話したそうで、エルノが王子として愛されているのが見て取れる。



何となく、心の温まる光景だった。






お店の並ぶ通りは結構な距離があったけど、その通りを過ぎればもうすぐそこに、お城の入口は近付いていた。





お城はとても大きく、これもまたヨーロッパ風だった。




日本のお城も立派なものが多いけれど、それとはかなりかけ離れたこのお城も豪華で、美しいレンガ造りだった。





「す、すごい……大きい。」




「そんなこと、ないよ。さ…中に入って。」





ずっと握られていた手は離れ、二人は城の入り口へと進んだ。