---春とは何か?
そんなこと、理論的に説明できる人がどれくらいいるのか……
少なくとも、私には出来そうにない。
「えっと……春とは…季節の一つで、冬の後に来ます。あたたかくて、雪が溶ける季節……」
「……う、うん。」
エルノの歯切れは悪いまま。
多分、想像がつかないんだろう。
あんまりにエルノの反応が悪いから、話が通じているのか心配になる。
「あの……私の言ってること、伝わりましたか?」
「……大体。おばあさまからも、聞いたことはあるから。この国は、一年中…いわゆる冬という季節なんだって。」
おばあさま………?
それって…!
「それって…!?」
「詳しくは……お城の中で話そうか。」
エルノに促され、門のすぐ近くでずっと立ち止まっていたことに気付いた。
まだお城というよりも、街にすら着いていない。
エルノは微笑むと、私の右手を握って歩きだした。
「ついてきて。お城まで、案内するから。」
「えっ、あ……ハイ」
エルノの手は、あたたかくて…
こんなあたたかさを春のようだと、例えれば良かった…と思った。



