【完】ダンデライオン






この城には、僕しかいない…?
それってどういうこと……?





どこから質問したら良いのか迷っていたら、男の人はニコッと微笑んだ。






「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はエルノ。この国の王子だよ。」





「……王子……王様はいないのに王子はいるんですか?」





王子がいて、王様がいないってどういうこと?





エルノは、少し言いにくそうに説明をしてくれた。





「僕はこの国の王子。それは間違いのないことだよ。……この国には国王と女王がいないんだ。」






「え…?」





「僕の両親は……亡くなってしまってね。国王がいなくなった今…僕が国王になる流れなんだけどね。」




やっぱりエルノは王様なんじゃ…?
すぐ思ったものの、それでもエルノは何だか歯切れが悪い。





「この国には、20歳にならないと王位を継承できないっていう決まりがあるんだ。」





「…へぇ……えっ、ということは…?」






「そう。僕は19歳…。そしてこの国の時は止まっていて…永遠の命があるからこそ、年をとらない。だから、王位が継承出来ない。」





永遠の命…それはマグノアも言っていた。
それが、こんなところで影響するなんて、驚くほかなかった。





「だから、僕は国王にはなれない。ずっとこのままかもしれない。」




それが良いことなのか、不幸なことなのか…私は何も言えなかった。


まだ分からないことだらけだけど……この国は、私が思っている以上に複雑な事情を沢山抱えているんだと感じた。






「あの……お城には一人で住んでるんですか?」




「いや、お城で働く人もいるから一人じゃないけどね。」





ところで…と、エルノは私をジッと見つけた。