雪がうっすらと降る中、狼と歩き出す。
サクサクという足音が再開した。
「あの、さっきの狼は…」
『……さっきはすまなかったな。森の中でニンゲンに会うのは久しぶりだったからな…お前に防犯ブザーを鳴らされて落ち着きを失ったらしい。』
私の隣を歩きながら、狼が淡々と話す。
サラッと言ったけど、私に防犯ブザーを鳴らされたからって言ったよね?
「えっ、もしかして防犯ブザー鳴らしたのがいけなかったの!?」
『狼は、大きな音がすると群れの習性で遠吠えをする…全ての音に反応するわけではないんだがな…。お前がブザーを慣らすことで、アイツは遠吠えをした。……私に自分の居場所を知らせるために。』
「……すいません。」
とんでもないことをしてしまった…。
果てしない後悔は凄まじかった。
…というか、
「…あなたに知らせるために遠吠えを?」
『あぁ。私が、群れの長だからな。』
……長。
先輩じゃなかったのか…。
きっと、私が鉢合わせした狼に驚いて防犯ブザーを鳴らしたら。
その音を群れの習性で、仲間からの合図だと思って遠吠えをした。
そしてリーダーがやってきた。
……ということかな。
そして狼に道案内をしてもらうことになるなんて……。
怖すぎる展開にもはや眩暈がする。
お城が見えれば、もう案内なんていらないのに。



