目の前にいた狼が立ち去った。
その瞬間、私の素晴らしい防衛本能が働いた。



私はものすごい早さで反転して背後の狼と対峙した。






そしてこの状況について考えてみる。






……これはどういうことなの??






背後にいる狼が、目の前にいた狼を追い払ってくれた…。





背後の狼の方が明らかに先輩っぽい=先輩に獲物を譲った。




……これしか考えられない。








つまり、ピンチはまだ終わってはいない。
死ぬかもしれない危険は結局まだ続いているということね!






…かと言って、野生の狼とどーやって戦えば良いの?
おばあちゃんもこんな野生動物がいるなんて一言も言ってなかったのに……。






『……おい。』




「はい?」





狼に話しかけられて、とっさに返事をしてしまった。




狼は、私をしっかりと見つめていた。
威嚇はしてこないけど……怖い。






『……初めて見たが、お前はあの国の者か?』





…やっぱりこの狼がしゃべってる。
少し低くて篭った感じの声。






「あの国って……?おばあちゃんの国のこと?」






『…………意味が分からない。』





狼にバッサリ言われたー!! 
案外クールだよ、この狼!!