恐怖で声が出ない。
そんなことって、あるんだね。





だって。当たり前じゃん!
野生の狼なんて初めて見たよ!!





さっきの音は、この狼の走る音だったみたい。
突然、私の目の前に現れた狼。






「グルルルルルル…!!!」






……すごく威嚇してる…。
こっ、怖い……!!





お互いに見つめ合い?ながらジリジリした状況。
…少なくとも私は、この狼がいなくならないと動けない!!





雪が降る寒さの中、私の額にはジワリと汗がにじむ。


「えぇ…っ!どうしよう…どうしたら良いの…!?」






恐怖から、不意に泣き出しそうになる自分を諌める。
泣いても、何の解決にもならない!





…とりあえず、何とかこの場を切り抜けないと……このままじゃ……





「あぁっ!!」




あることがひらめいて、つい大声が出た。
狼は私の大声に一瞬ビクついた。





私は急いでリュックを下ろし、地面に置いた。 
寒さなのか恐怖なのか、どっちもなのか…手が震えてうまくチャックが開かない。





ちょっと悪戦苦闘しながら、震える手でリュックから防犯ブザーを取り出した。





「私の大声にビクついてたし、防犯ブザーでどっか行くんじゃ……」





私は、一気に防犯ブザーのヒモを引っ張った、。