「雪で…前が見にくいよー……」





触れるとホロホロと解けるような、小さな雪がずっと降っている。




たまに風が強い時には吹雪のようになって、前が見にくい。
それに、遥か遠くは白んでいて、そもそも見えない。






「夏休みに雪を見るなんて……」
なんていう、私のボヤきは風の音と、サクサクと音を立てる私の足音に消えた。





……だいぶ、歩いたかな?





振り返ると、私が歩いてきた足あとが見える。
遠くにある足あとは、雪が上から降って消えてしまっているものもある。





「足あとが見えなくなったら……帰れなくなったりしないよね??」






言葉にしてしまうと、やっぱり不安が増す。
でも、お使いが終わらないと帰れない。





早く終わらせてしまおう。
サクサクと、足を早めた。





終わりの見えない針葉樹林を、早歩きで歩く。
早く帰りたい一心で、後ろを振り返ることはしなかった。






もうどれくらい歩いたのか…?
それはもう分からないけれど。


30分くらいは歩いた気がする。






何か、聞こえる気がする。
軽い、足音みたいな…





タタッ、タタッ、と何かの音がする。





何の音……?





音がする方向を見ると、そこには。
野生?のオオカミがいた。