「なんかー、この記事によるとその国は一年中白夜みたいな状態で、針葉樹林の森に囲まれてるんだ……それに、高い塀で囲まれた国なんだってー」




「………」




私はリアクションは失っているけど、先輩は勝手に話を続ける。





「針葉樹林の森の中にオオカミがいて、イマイチ行きにくい国らしいんだけど……。その針葉樹林はまでになかった種類だからサンプルが取れると思うんだよねー、良いよね、欲しいよねー」






……私は、確信に変わった。
私、この国を知っている。





そんなこととはつゆ知らず、先輩は笑っている。




「でも狼なんて怖いよねー、無理かなー……って春川さん?聞いてる?」



私は、もう覚悟を決めた。




「先輩!!私、その国に行きます!」




突然の私の決意表明に、先輩はうろたえる。




「えぇっ!?でも、発見されたばかりでまだ誰も行ったことないんだよ!危ないよ!?」





先輩はオロオロしてるけど、私はグッと握りこぶしを作る。





「大丈夫です!私のおばあちゃんも、友達も、好きなひとも、その国にいますから!」




「えぇーっ!?」








あれから私は、あの日の全てを乗り越えることが出来たか…と言われると、それは自信がない。



忘れることはできないし、それで涙する日もある。




だけど、出会いがあれば別れがあって……それは悲しいことだけれど。
それには全て、意味がある。






もしも。
愛する人に、もう一度会うことが出来るならば……今度は、ずっと一緒にいたい。





パソコンの画面に向かって、私は微笑む。





「もうすぐ会えるね、エルノ……」