【完】ダンデライオン






「たんぽぽちゃん!」





背後から、私を呼ぶ声がして、振り返った。



ウィルさんが、森へ出てきていた。




ウィルさんは、黒いワンピースに黒いローブという防寒な服装。
全身黒コーデをすると、おばあちゃんに本当にソックリ。




ウィルさんは、焦ったように早歩きでこっちへ向かってきている。





「ウィルさん……」




そして、ウィルさんは私たちの近くまできて、横たわるマグノアに気付いた。




「……マグノア…!」




ウィルさんは、マグノアに近寄り…そっと頭を撫でる。
その手つきは、とても優しい。




「今まで…ありがとうね……」




とても、切なそうな顔をしている。
ウィルさんには……どんなマグノアの未来が見えていたんだろう…。





ウィルさんは私を見ると、ここまでやってきた本題を切り出した。





「たんぽぽちゃん、早く元の世界に戻った方が良いわ…」




「え……?」





「あんまり魔法を使いすぎると、元の世界に戻れなくなることがあるんだけど……さっきの魔法の規模が大きすぎて、次に魔法を何か使ってしまったら……もう元の世界には戻れなくなってしまうわ」






元の世界には、戻れない…?




「そ、それって……」




もう、エルノとも、ウィルさんとも……会えなくなってしまうってことでしょ…?





ウィルさんは、ためらう私を説得する。
ウィルさんの手が、そっと私の頬に触れる。あたたかくて、優しい手だった。




「あなたはもとの世界で、時間を大切にして…夢を持って生きて。……そうすれば、きっとまた会える。私の占いでは、そう出ているの。」