おばあちゃんは本や防犯ブザーを、小さめなリュックに入れた。
それと、お守りと称したお花の形をした折りたたみの手鏡も。
何かあった時に役に立つ…らしい。
出発は今すぐこれから、みたい。
おばあちゃんいわく、「夜の方が安全だと思う」……らしい。
「夜の方が安全」とか「防犯ブザー」とか、何なの?フツー逆でしょ!?
治安悪すぎるんじゃない!?
怖いんですけど……
おばあちゃんは私の不安を察したのか、おにぎりとクッキーを持たせてくれた。
それと……
「たんぽぽちゃん、一つだけ魔法の呪文を教えるわ。」
「えっ…?魔法の呪文?」
魔法の呪文。
何かワクワクする響きだな…。
でも、やたら長かったらどうしよう。
覚えられないかも…
「呪文は、『モール』。何か助けが必要な時だけ、唱えてね。」
もーる…。うん、短くて良かった!!
ホッとした私に、おばあちゃんは釘を刺した。
「ただ、呪文は必要な時にだけ答えてくれるものよ。無意味には、唱えないでね。」
「う、うん。分かった…」
私の今日の目的は、国のお城に向かっておばあちゃんが読んだ本を返すこと。
そして、おばあちゃんからの伝言を伝えること。
なんだか、お使いみたいだなと思った。
異世界の雪の国へ……。
初めて…魔法を見れるかもしれない。それはドキドキして、不思議な高揚感さえあった。



