今?そりゃナイよ。
リュックの中にあるって言ったじゃん。
今は手ぶらで、リュックは私の部屋と準備してもらった部屋に置いてある。
『……ハァ…、あの人から、ちゃんと持っとけみたいなことを言われなかったか?』
「うーん………?」
マグノアにそう言われて思い出すけど……言われたような、言われてないような………。
『もう、良い。とりあえずその手鏡を取ってこい。』
「え?今から…?」
『当たり前だ。サッサと取って、サッサと戻って来い。…良いな?』
「ハァー?何よ、それ…」
『良いからサッサと行け!ハイGO!!!!』
「はっ、ハイー!」
マグノアが似合わず勢いよく大声なんて出すから、ビックリしてつい従ってしまった。
走りながら、急いでお城に戻り、また道に迷った。
メイドさんに案内してもらいながらまた走り、私はヘロヘロになってまた抜け穴へと戻ってきた。
マグノアはと言えば……
『遅い!ダラダラするな!』
体育の先生のようなことを言いながら、同じ場所に立ったまま、私を待っていた。
そうして、私の息も整っていないのに、体育の先生モードのマグノアが私を置いていこうとするかのように森の中へと歩き出す。
仕方なく、私はその後をヒィヒィ言いながら着いて行く。
サクサクと、誰もまだ通っていない雪の上を踏みしめながら歩みを進める。
森の中へと進み、だいぶ歩いた。
雪の国の塀も、結構遠くに見える。
そろそろ、良いんじゃないかな?
「ねぇ、マグノア…何でこんな遠くまで?」
『人に聞かれては困る話だからな。』
遠くまで歩いてきたのは、それが理由だったらしい。



