「ありがとうね、……おばあちゃん」
その言葉を聞いた後、おばあちゃんはポカンと口を開けたまましばらく固まっていたけど。
とても嬉しそうに笑った。
「…どういたしまして!」
何だか、私も嬉しかった。
そして私はローブと黒い長靴、リュックを再び借りた。
準備はできた。
そして私とおばあちゃんは、また雪の国のある異世界へと繋がっているドアの前に立っている。
「じゃあ…開けるよ?」
「うん…」
おばあちゃんが真剣な顔で私に言い、私も頷く。
ドアは開き、銀世界が視界いっぱいに広がる。
今は、雪は降っていないみたい。
一歩踏み出すと、サク、と雪を踏みしめる音がする。
感覚を確かめるように、私は数歩歩いてみた。
…うん、大丈夫そう!
「気をつけてね。たんぽぽちゃん…」
「大丈夫だよ、おばあちゃん」
私が振り返ると、おばあちゃんは少し心配そうな顔をしていた。
でも、私はそんな顔をしてほしくなくて、大丈夫だと笑って言った。
おばあちゃんはふと安心したように微笑んだ。
「たんぽぽちゃんに、神のご加護がありますように。」
おばあちゃんのその言葉は、遠い祈りのようにつぶやかれ、ドアは閉まった。
私はまた、森の中を歩き出す。



