爽が買ってきたコーラを、一気にのどに通す。

とてつもない清涼感が、体中に広がった。




「・・・っくぅー!」

「・・・洸、父さんに似てきた?」

「・・・嘘でも言わないで、それ」




爽の最悪な冗談に苦笑しながら

もう一度、飲み口を口に当てる。

のどをコーラが通るのが分かるように

アイツの声が聞こえたのがすぐ分かった。




「爽ー!杉崎先生が呼んでたよ。」

「え、スギちゃん?」

「職員室来てだって。」

「ん。あ、永久(とわ)髪、変になってる。」

「えっ。」

爽が、永久のやわらかそうな髪に触れる。

俺は気にしないフリをして、甘い炭酸水をのどに送った。




甘いけど、酸っぱい。




「よし、直った。」

「・・・ありがとう。」

「んじゃ、行ってくんね。洸、俺の分のコーラ残しとけよ。」

「うぃー。いってらー。」

ひらひらと右手を振り、永久の背中を見つめる。

階段の角を曲がりきるまで




永久は爽の背中を見つめていた。




俺、爽、永久。

学校でも有名な、幼馴染の3人である。


勉強は苦手だが、スポーツは出来る弟、洸。

スポーツは並だが、勉強は出来る兄、爽。

勉強、スポーツ共に並だが、性格のいい一人っ子、永久。




バランスの取れてる3人は、いつしか

一緒にいることが当たり前になっていた。

そんな中で恋心が生まれるのに

あまり時間はかからなかった。




いつからか、俺は永久に特別な想いを抱いている。

でも永久はきっと・・・・




「洸?」

いつまでも階段の方を見ていた俺に違和感を抱いたのか

永久は、心配そうに話しかけてきた。

「ん?あぁ、なんでもない。」

人差し指のかかってる部分が少しへこんだ

コーラの空き缶を片手に立ち上がる。

「永久、お昼食おー。」

「え、爽来てからの方が・・・」

「いーから、いーから。」

永久の手を引いて食堂に向かう。

約30度。

表情が見えない、微妙なポジションをキープした。







「あ、爽ー。こっちこっち。」

「おいてったな、洸。」

全力の笑顔で、言葉なく、きらきらを飛ばす。

「あはは。私、飲み物買ってくるね。爽、洸、何がいい?」

「あ、俺はいいよ。洸がコーラ半分残して・・・」

爽の前に空き缶をコンッと置く。

そして、全力の笑顔。

「・・・俺、オレンジ。」

「俺、ウーロン茶。」

「おっけー。」

永久が自動販売機に足を進めた。




「洸。」

「なに、爽」

「突然なんだけどさ、俺、永久のこと好きなんだ。」

「・・・・・・は?」




爽の、唐突で、頭のついていかない発言に

開いた口がふさがることはなかった。




永久と、爽が、両想い――――?