そこにいたのは、さっき塀の上にいた女、結衣だった。 オレと目が合うと、結衣はうれしそうに微笑む。 両手をめいいっぱい広げて、振ってる。 ……オレに? オレが自分の顔を指さすと、結衣が大きく頷いた。 さらに手を振りながら、その場でピョンピョン飛び跳ねだす。 片方の手には、例の紺色の布をヒラヒラさせて。 やがて、結衣の体がピタッととまった。 口をパクパクと開けて、何かを言ってる。 何なんだ、いったい……。 オレはじっと目を凝らす。