「本当にありがとう」
塀から降りて、改めて彼女はペコペコと頭を下げた。
「これ、大切なものだったから……」
そう言って、手にしている布を見つめてる。
その表情はうれしそうだったから、本当に大事なもんだったんだろうなって思う。
下から見た時は、ハンカチかなって思ったけど。
もっときめ細やかな感触で、形は三角形だった。
何に使うものなのか、よくわかんねーけど。
「別に、あんたのためじゃねーし」
オレは言う。
「そっちの人が」とショートボブの女の方に視線をやる。
「落ちる落ちるって、連呼しまくってるからさ。それ聞いて、こいつが死にそうになってたの」
今度は隣に立つコータを見た。
今はマシになってるけど。
さっきは、マジでブッ倒れそうなぐらい青ざめてたもんな。
オレの言葉に、ショートボブの女がハッとしたような顔をする。
「あ。そっか。受験生だ! ごめんね~。縁起悪いこと言っちゃって」
「別に、オレは気にしてねーけど」
「てか、今日、ここにいるってことは、柴高?」


