最近、風紀がみだれてます (エピソード☆ゼロ)


「本当にありがとう」


塀から降りて、改めて彼女はペコペコと頭を下げた。


「これ、大切なものだったから……」


そう言って、手にしている布を見つめてる。

その表情はうれしそうだったから、本当に大事なもんだったんだろうなって思う。

下から見た時は、ハンカチかなって思ったけど。

もっときめ細やかな感触で、形は三角形だった。

何に使うものなのか、よくわかんねーけど。


「別に、あんたのためじゃねーし」


オレは言う。


「そっちの人が」とショートボブの女の方に視線をやる。

「落ちる落ちるって、連呼しまくってるからさ。それ聞いて、こいつが死にそうになってたの」


今度は隣に立つコータを見た。

今はマシになってるけど。

さっきは、マジでブッ倒れそうなぐらい青ざめてたもんな。

オレの言葉に、ショートボブの女がハッとしたような顔をする。


「あ。そっか。受験生だ! ごめんね~。縁起悪いこと言っちゃって」

「別に、オレは気にしてねーけど」

「てか、今日、ここにいるってことは、柴高?」