「暑い、暑ーーい」
この日は今年一番の最高気温を記録した日だった
親友の池田 涼香(いけだ りょうか)が
暑い暑いと言いながら
まだHRが始まる前の教室で下敷きを仰いでいた
「おぅ~い、始めるぞ」
担任の田中先生が扇子をパタパタしながら入って来た
みんなガタガタと椅子に座る
「今日は、転校生がいるんだがな・・・」
そう言うと暑さなんかなかったように
みんな騒ぎ出す
「せんせーい、男?女?」
「男だ、じゃあ入ってこい日下野」
((ガラッ
ドアが開いて
入ってきたのは
爽やかな黒髪にふわっと香るオレンジの香り
一番後ろの席なのに
君の香りがまっすぐ届いてきた
「日下野 裕哉(くさが ゆうや)です、よろしく」
黒板に白いチョークで名前を書くと
オレンジの香りのように微笑んだ
その人の笑顔は世界中の誰よりも
きっと
素敵だった


