―現在in公園―

私は目を開けて、ゆっくり右手を空に伸ばす。

桃色のブレスレットが目に入る。

「……」

私は手の隙間から零れる日光に照らされながら、嬉しそうに微笑んだ。


【…今の私には…大切な人達が居るんだ。

本当の私は、きっと今―――そこにいる】


ゆっくり起き上がると、目の前には小さな女の子がいた。

小さな女の子はパジャマ姿で、人形片手だった。

暗い瞳で黙ってこちらを見つめて、何か言いたげだった。

「…大丈夫」

私はかがんで、幼い自分を抱きしめた。

『!?』

幼い私は目を瞬かせた。

「心配しなくて大丈夫だよ。私はこれから、あの人たちと生きていくから」

『…っ…!!』

幼い私は私の胸で、声を殺して泣きじゃくる。

「貴女にも、きっとこの先…いい人たちが待ってるから」

私は幼い私に向けて微笑んで、幼い私の頭を優しく撫でた。

『……』

「それまで、足掻いて苦しんでもがいて。辛いかもしれないけど、何一つ無駄なことなんてないんだよ。その先に、きっと光があるから」

『うん。…おねえちゃん、わたし、一回も辛いとか思ったことないよ』

「?!」

『わたし、みんなといれてずっと楽しかったよ』

幼い私はニッコリ笑う。

「そっか…。そっか…。そうだったね…ずっと、ずっと…楽しかったね」

私は泣きながら、幼い私に笑顔を見せた。

『だから、おねえちゃんも自分を責めないで』

「…うん。ありがとう」

私が微笑みながら礼を言うと、幼い私は私にニッコリ笑って消えて行った。

そこに、

「オ~イ、美桜。何してんだ?」

と愛斗がバイクに乗ってやってきた。

私は涙を拭いて、立ち上がる。

私はあの時から、下を見なくなった。

前を向いて歩いた。

過去の自分に恥じないような生き方をするんだ。

「おーい。美桜~」

愛斗の後ろから、バイクを飛ばしてくる蓮太。

「……」

愛斗の後ろでバイクに跨ったまま、腕組みして私を待つ翔。

「何?今日はどこ行くの??」

私は嬉しそうに笑いながら、愛斗たちの元へ駆けて行った。





―――もしもし。あの時の私ですか?

もぅ少し待ってて。きっと、すぐに…来るからね。

アナタは…1人じゃないんだよ―――





「……」

私は青い空を見て、ニッコリ笑った。

遥か遠く、空の向こうの私に向けて…。